2016年08月10日

王子様はガラスの靴の持ち主を探した

何人もの女性がガラスの靴に挑んだが誰も成功しない。諦めかけたとき、ようやくピッタリと合う女性が現れた。早速王子様はその女性を馬車に乗せ、城に招いた。
屈強なお供に前後を守られながら地下に向かう。女性の目にはランプの明かりがユラユラと不安げに映る。そんなことに構うことなく王子様は女性の右手を掴み一歩前を歩いている。扉が開き、火が灯される。手前の灯りだけでは気付かない。灯りが手前から奥の方へと順に室内を明るくしていく。女性の顔は恐怖一色となった。
そこには鋭い刃物やとてつもない重みを帯びた武器が所狭しと置かれていた。処刑部屋らしい。王子様が手を離すと、後ろにいたお供が女性の口を塞ぎ、次に体を押さえた。前にいたお供は剣を手にしていた。王子様は、悪魔が乗り移ったかのような笑みでお供に殺しを行うよう指示した。お供は胸や首を中心に斬りつけた。もがき苦しんだ女性は中空を睨みつけた表情で命を終えた。
王子様は斧を持ち上げ、女性のスネ目掛けて振り下ろした。ドスッという鈍い音、間髪入れずに床に当たる乾いた無機質な音が部屋に響いた。ワンテンポ空いてから聞こえてくるのは、また鈍い音。足首がスキップしていた。そして両足首だけが王子様の手に残った。
王子様は両足首から血が流れなくなってからガラスの靴にはめた。ピッタリはまったその姿をうっとりしながら眺める。我に返った王子様はガラスの靴からはみ出さないように足首をナイフで綺麗に綺麗に削った。
王子様は自室に戻ると、隠し扉を開け、新たなコレクションとしてガラスの靴を飾ったのだった。ガラス越しに見える爪はヌラヌラとした赤黒い液体で彩られている。
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2016年06月24日

スイーツヤクザって漫画作ればいいのに

「アニキ、買ってきました」
『おう。見せてみろ』
「はい。これッスよね?」
『……てめえ、これはギャグのつもりか?』
「はいっ?と言いますと?」
『よく見ろやてめえ!"名無しの贅沢プリン"じゃなくて、"こだわり卵のプリン"じゃねえか』
ドカッ!バシッ!
「いてっ!えぇ?そんなことないはずっすよぉ。売り場には名前や値段と一緒に写真付いてたんスけど、同じ瓶ッスよ」
『バッキャロー!』
ドゴォッ!
「うげぇ!」
『瓶が同じでも"こだわり卵のプリン"はカラメル入りなんだよ!俺はカラメルがあんま好きじゃねえんだくそったれが!』
ボゴォ!ドカドカッ!
「ひぃぃすんませんすんません!買い直して来ますぅ」
―――
『ほらよ』
「こ、これはなんすか?」
『あぁん?てめえの目にはこれが道徳の教科書にでも映ってんのか!?』
「いえいえいえいえ、レシピ!レシピです!プリンの!」
『わかってんじゃねぇか。次ナメた口きいたらドツキまわすぞ』
「あの、これは……」
『んん?作るに決まってんだろ』
「アニキがッスか?」
『バカが!てめえがやるに決まってんだろうが!』
「えぇぇ!?無理です無理です!料理なんて女がやるもんじゃないッスか!」
『ほう。ならてめえの小指ほどのナニを切り落としてやろうか?』
「嫌です嫌です!作りますから切り落とさないで下さいよぉ!」
『最初からそう言え!いじいじと女々しい奴だなてめえは!』
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2015年11月02日

ギネス認定員「また大勢でやるパターンかよ……」

某地方のとある町。そこにギネス認定員は呼ばれた。町役場からギネスの認定をして欲しいというものであった。
「勘弁してくれよまったく」
ギネス認定員は始まる前からうんざり気分だ。町民が200人は河川敷に集まっているようだ。野次馬もいるのだろう。頑張ってね、と声を掛けている者もいた。ガヤガヤと騒がしい。おばさん連中のガハハ笑いはその喧騒の中でも飛びきり大きなエネルギーを持っていた。幸せそうにノイズを周りの人間にぶちまける。学校や公民館で使われていたであろう、折り畳み式の長机がおじさん連中の手でぞろぞろと並べられる。組み立てられていった先から、今回のギネスに関係する物が机の上に置かれる。巻きす、焼き海苔、ご飯、そして卵などの具材。そう、この町の人達は巻き寿司を作ろうとしているのだ。
「くだらねぇ」
そう思いながらギネス認定員はその光景を見てるような素振りでピントを遠くの山々に合わせていた。
そうこうしている内に机を並び終えたようだ。獲物が見当たらないときのアリンコのように町民が好き勝手にアチラコチラをウニウニさまよっている。リーダー的存在らしきおじさん数人が大きな声で民族大移動を始めた。少しずつ着席し出し、数分後には全員席についた。
そして始まった。焼き海苔を長く繋げるためにご飯粒で接着しているようだ。楽しそうな者、苦戦する者、相変わらずペチャクチャ隣と喋りながらする者などがいたがギネス認定員はどうでも良かった。漸く繋げ終え、ちゃんと繋がってるかどうか確認するため、一斉にそして慎重に胸の位置まで持ち上げる。ところどころで柔らかい叫び声が上がる。離れないようご飯粒をもう一度つけなおし、再度一斉に持ち上げる。なんとかうまくいったらしく、ご飯を載せ具材を載せ、全員で掛け声を出してそれに合わせて巻いていく。ついに完成だ。リーダー的存在らしきおじさんの中の親分的存在のおじさんに促され確認作業に入る。バカみたいに長々続く手巻き寿司。それを真剣な眼差しで適当に見て歩く。短時間かつ大したこともしていないのに疲労感が滲み出ている者や、こちらをじーっと見つめる者、もう隣と話をしている者もいる。手を握りしめ、何かに祈っているマヌケもいた。ギネス認定員はこのマヌケの前で、
「不合格」
と言ってやりたかったが堪えた。一番端までたどり着き、スタート地点に体を向ける。
「ギネス認定です!」
大きな声でそう叫ぶと、ワッと歓声が上がった。ハイタッチして喜んだり手を繋いでぴょんぴょん跳ねる、いや実際には数センチも宙には浮いていないのだが、とにかく嬉しさを出来る限り表現していた。ひとしきりはしゃいだ後は野次馬達と一緒にパクパクと食べ始めた。任務を終えたので帰ろうとしたとき、町長が現れた。これで町おこしにもなります、など礼を言われた。笑顔で応対しながらも心の中では、
「町の名産を使ってるわけでもないのに何が町おこしだ。せいぜい夕方のニュースのローカルコーナーで取り上げられて、何が認定されたかだけを目にして町名なんて誰も気になんかしちゃいねえよ」
と思いつつその場から去った。
posted by ヴィオ at 22:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 駄文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする